3年で駆け上がる新米理学療法士

整形外科中心の急性期総合病院で働いています。一般的な整形外科疾患やスポーツ障害・外傷のリハビリ経験、文献や個人的に勉強したことなどを発信していくブログです。

痛みのいろは①

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目次


術後リハビリをしていると、痛みの訴えをよく耳にする
でも、それをどう評価するのか、ドクターやコメディカルとチームとしてどう対応できるのか、リハビリの専門職としてなにができるのか、すごく悩んだ時期がありました。

痛みシリーズでは、痛みを基礎に立ち返って学んでみよう!
ポイントは

  • 痛みは機能障害・能力低下・社会的不利すべてにかかわってしまう!
  • 運動療法で痛みを軽減できる根拠を知って、リハビリを行う!
  • 薬・病棟や家での生活状況・自律神経などリハビリ室の外を知る!

痛みとは

実質的あるいは潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはそのような損傷を表す言葉を使って表現される不快な感覚・情動体験

痛みはこのように定義されてる
ん〜、難しい
つまり、明らかな組織損傷がなくても過去の体験などから、痛みを表現することもあるということ。

大切なことは痛みはそれ自体に加えて、患者さんにとって社会的な不利益ももたらしちゃうこと。

  • 仕事ができない
  • 部活動に参加できない
  • 家事・育児ができない

いろんなことがある。
こんな状態が続けば、不活動・抑うつ・社会生活への適応障害になりかねない。
結局、痛みは機能面・能力面・社会的不利すべてに関係してくる!

痛みの恐怖-回避モデルってやつですね。

言葉の定義

参考書や文献を読んでると、感覚・知覚・認知って言葉がよく目に付く。
専門家である以上、この言葉の意味は確実に知っておこう。

①感覚

  • 刺激によって生体内の受容器が興奮し、脳の関連領野に情報が伝達され、それが意識にのぼった体験
  • それがどのような性質で何であるかの情報処理プロセスは含まない

②知覚

  • 刺激の性質を把握して、感覚を意味付けすること

③認知

  • いくつかの知覚を組み合わせ、それが「何であるか」、「どこにあるのか」を判断すること
  • この作業には感覚・知覚に加えて、記憶・言語・判断といった機能の付与・統合も必要

痛みのメカニズム

痛みの種類

急性痛
▶警告信号
▶逃避反射(=屈曲反射)

慢性痛
▶Not 警告信号
▶原因がなくなったあとの痛みで、除痛が鉄則!

痛みの伝達経路

①受容器で各刺激を感知
②受容体で各刺激を電気的信号に変換
③脊髄後角へ伝わった後に、信号を神経伝達物質に変換
④痛みを感じる大脳皮質「外側脊髄視床路」や感情を司る大脳辺縁系「内側脊髄視床路」へ


痛みの受容器は当然自由神経終末
自由神経終末はさらに2つに分けるれます

▶Aδ線維(有髄線維)で素早く大脳へ
▶侵害性機械刺激に対してのみ反応
▶1次痛(鋭くて・部位が明確)

  • ポリモーダル受容器

▶C線維(無髄線維)
▶多種類の刺激に対して反応
▶2次痛(鈍い・部位が不明瞭)


この線維が通る道には名前がありますよ

▶直接、体性感覚野へ
▶1次痛の道

大脳辺縁系
▶2次痛の道
▶ストレスなど感情や間脳視床下部に影響して、自律神経症状を起こす原因になる


大事なことは、外側・内側の経路は相互に関係していること
最終的には帯状回前頭前野に情報が送られます

特に!
前頭前野は広汎性侵害抑制調節・下行性疼痛制御系に関わっていて、これが慢性痛に関係してるんですね!
リハビリ(運動療法)が痛みに対応できる理由はこの2つから説明できます。


学校で習う基本的なことを振り返ったシリーズ①はこれで終わり

覚えておきたいことは

  • 痛みの定義
  • 感覚・知覚・認知の言葉は意味が違うこと
  • 痛みを伝える道は2つあること

次回は脳について主に勉強していこうかな

膝離断性骨軟骨炎の治療方針と競技復帰

目次


膝離断性骨軟骨炎の病態はこちら!
therapist-step.hatenablog.com

治療方針と予後予測

「血流再開、骨新生、骨癒合」という骨折治癒の原則に基づいて計画が立てられます。

<治療方針ポイント>
①骨端線の有無
②病変の不安定性
③部位(荷重面か否か)

JOCDでは保存療法が有効の一方で、早期スポーツ復帰を目指す場合には積極的に手術が行われます。
反対にAOCDでは手術療法が選択されることが多いですが、病変が不安定であれば骨端線閉鎖前でも手術となることが多い。

予後不良因子>
不安定型、単純X線像での骨硬化像、直径2cm以上の病変部、classical site以外の病巣部位など

保存療法と競技復帰

成長期で骨軟骨片が安定していれば、安静によって骨折治癒と同じく骨新生が起こり自然治癒の可能性があります。

10~18ヶ月で治癒率は50%(Cahill 1995)で、一般的に良好な結果。

プロトコルを調べてみましたが、免荷・固定をしたり、日常生活レベルを除いてスポーツ活動のみを禁止したりなど様々なものがありました。
ただ、大きな流れとしては3ヶ月を1つの目安にX線MRIで経過を追い、回復が見られれば徐々に活動を許可しています。

この際に守らなければならないのは、疼痛など症状の有無に関わらず画像所見上の改善が得られない間は運動再開をしないようにすることです。
治癒が遷延していれば更に3ヶ月のスポーツ活動を制限。6ヶ月時点で変化がみられなければ手術療法へ流れが変わります。


治療期間が長期になるために、
①骨軟骨強度を上回る負荷によって膝OCDが発生したこと
②膝への負荷量をコントロールするために活動を制限する必要があること
③安静によって組織修復を図れる可能性があること

このあたりはちゃんと伝えておきましょう!

手術療法と競技復帰

骨穿孔術(鏡視下ドリリング)

病巣の剥離がなく、安定期の症例(ICRS−OCDⅠ・Ⅱ)で適応。
周囲正常組織からの血行や骨髄間葉系細胞の流入を促進することにより、病巣の修復・改善を図る方法。
侵襲が少なく、骨端線閉鎖前なら早期スポーツ復帰のために行われることもあります。

スポーツ復帰はリモデリングが完全終了する4~6ヶ月以降!
具体的にはジョグ開始時期は平均2.1ヶ月(1.5~3ヶ月)・スポーツ復帰は平均4.7ヶ月(2.5~6ヶ月)と報告したものがありますが、衝撃の強いスポーツでは復帰時期をやや遅らせることも必要かも...
疼痛は術後早期から軽快していきますが、保存療法同様に画像所見をもとに慎重にステップを踏んでいきます。

病変部固定術

ICRS-OCDⅡ~Ⅳを中心に剥離期で適応。固定材料は骨釘や金属スクリュー、可溶性ピンなどが使われ、特に骨釘は内固定材料に加えて、骨移植による治癒促進も期待できます。
早期荷重・早期競技復帰は骨軟骨片の再脱落リスクにつながるので、固定強度・癒合能(年齢)・荷重時期など慎重に検討していきましょう。

ジョグ開始時期は3ヶ月・スポーツ復帰は平均6.3ヶ月(5~8ヶ月)と、およそ6ヶ月が1つの目安。

骨軟骨柱移植術

ICRS-OCD Ⅳなど遊離体になった骨軟骨片が損傷部で著しく変形変性している症例で適応。骨軟骨柱の採取は大腿骨非荷重部(主に膝蓋大腿関節)より行われます。
癒合が進む術後12週までは慎重なリハビリが必要ですね。

<メリット>

  • 壊死に陥った軟骨下骨に正常海綿骨を移植することによって、周囲病巣部の血流を改善し、治癒促進が期待できる

<デメリット>

  • 骨軟骨柱の最小径は5mmで、小さな骨軟骨片には不向き
  • 複数個の骨軟骨柱を採取したときには、採取部の症状や膝蓋大腿関節障害性変化が問題となる

ジョグ開始時期やスポーツ復帰時期は固定術に近いようです。

膝離断性骨軟骨炎

目次

膝OCDの治療方針などはこちら!
therapist-step.hatenablog.com

膝離断性骨軟骨炎(膝OCD)とは

①関節面の軟骨下骨組織の壊死
②次第に関節軟骨を含む骨軟骨片が母床より分離
③最終的に関節内の遊離体へ


人口10万人あたり15~30人程度(0.015~0.03%)と報告され、成長期のスポーツ障害として広く認識されてます。好発年齢は骨端線閉鎖前の10代で、約2:1で男性に多い。成人でも診断されることがありますけど、これは学童期にOCDが無症状のまま経過して骨端線閉鎖後に症状が出現したものと考えられてます。

* 発生時期による分類
・ 骨端線閉鎖前の若年者のOCD(juvenile OCD:JOCD)
・ 骨端線閉鎖後の成人のOCD(adult OCD:AOCD)
* 安定性による分類
・ 安定型
・ 不安定型
JOCDでは安定型病変(ICRS OCDⅠ・Ⅱ)、AOCDでは不安定型病変(ICRS OCDⅢ・Ⅳ)であることが多い。

発生原因

外傷・overuse・局所の血行障害・血行障害に伴う軟骨下骨の壊死・骨化遅延・円板状半月板の関与・遺伝的要因・軟骨代謝異常など。
直接的にはoveruseによる軟骨部の剪断ストレスが派生して、その深部の軟骨下骨が分離して起こると言われています。

簡単に考えれば
①成長期の骨の力学的弱点や筋腱の柔軟性(内的要因)
②スポーツによって膝に加わる負荷(外的要因)

に分けることができると思います

好発部位

大腿骨内側顆部が約85%
外側顆部が約15%
まれに膝蓋大腿関節面にも発生し、膝蓋大腿関節のアライメント異常が指摘されています。

一関節一病巣(単病巣)と両側対称性や多関節に発生する多病巣のものがあります。単病巣例はスポーツや外傷など外因を契機とする例が多く、多病巣例は甲状腺機能低下や成長ホルモン異常など内分泌系異常のものとWilson病など代謝異常の症例に多いようです。


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また、classicalタイプは顆間部であり、関節面の最荷重部から外れていることから、単純な荷重ストレスによる発生とは考えづらいですね。

国内では外側円板状半月板に合併したものが多く、外側顆部にも比較的多く発生することが知られてます。

  • 成長期サッカー選手の罹患膝は軸足である左膝に多い傾向にあり、大腿骨内顆より外顆に多く発生している(諸岡ら 2011)
  • スポーツ種目別ではサッカーが約半数を占め、大腿骨外顆の発生頻度が高い(吉矢ら 2011)

一方で、大腿骨外顆での発生時の円板状半月板の合併率は33%と低かったことから、内的因子よりも過負荷による外的因子が強いのではと考察しているものもあります。

これに関して、
不良な関節構造による過負荷とOCDは関連し(Grondalen)、依田は3兄弟に発生したOCDにおいて、3兄弟ともにFTAが180°以上であったと報告しています。

症状

臨床所見は非特異的で成長痛として見過ごされることがあります!
運動時・運動後の膝痛や腫脹、大腿四頭筋萎縮。進行すればキャッチング・ロッキングなど。
非特異的症状ですが、Wilson徴候がテストとしては有名どころ(ただ、陽性率は25%と低い)。

画像所見

画像所見では軟骨骨片が不安定であるかどうかを検討することで、今後の治療方針の参考になります。X線像で判明する場合は進行していることが多く、軟骨や軟骨下骨の評価ができるMRIが初期診断および治療方針の決定には有効。

X線:Bruckl分類>
StageⅠ:黎明期 X線画像で異常がない
StageⅡ:透亮期 病巣部の骨吸収により骨透亮像(骨が破壊され吸収された状態)を認める
StageⅢ:分離期 病巣の分節化、周囲の骨硬化像
StageⅣ:遊離期 病巣部が動いている(不安定性が進行)
StageⅤ:遊離体形成期 遊離体が関節内に認められる


MRI:Nelson分類>
Grade0:正常
GradeⅠ:病変部の信号領域の変化のみで、軟骨層は正常
GradeⅡ:病変部軟骨領域の膨化を伴った高信号像がみられる
GradeⅢ:骨軟骨片周囲に関節液の存在が認められる
GradeⅣ:混在または低信号を示す遊離体が関節内に存在する、または病変の中心部に混在または低信号を示す遊離体を示す像がみられる


<関節鏡所見:病期分類として定着しているICRS分類。4段階に分け、治療方針を選択>
ICRS OCD Ⅰ:病巣部は連続し軟化は認めるが、正常関節軟骨に被覆され安定した状態
ICRS OCD Ⅱ:関節軟骨の一部に不連続性を認めるが、プローピングで安定した状態
ICRS OCD Ⅲ:関節軟骨面は不連続で、病巣部は不安定であるが転位していない。
ICRS OCD Ⅳ:骨軟骨片が転位し母床内が欠損しているか、母床内に遊離体が存在する状態

JOCD(ICRS OCDⅠ・Ⅱ)は安定型ですが、病態としては病巣と母床との境界部は分離し、線維性組織と線維性軟骨が充満した偽関節と同様の遷延治癒の状態にあります。病巣全体を覆った関節軟骨が病巣を安定化し、不安定性を隠しているんですね。

膝蓋大腿関節障害と定義

目次

膝蓋大腿関節障害とは

PFPSや膝前面痛(AKPS)などリハビリの中で広く使われてますけど、それぞれの明確な定義が分らず、漠然と使っていたので調べてみました。


調べてみるとおもしろい!
1906年〜:膝蓋軟骨の変性・膝蓋軟骨軟化症がPFPSとされ、原因疾患の結果として出現する症状を指していた

1970年〜:膝蓋骨の病理学的徴候がなくてもPFPSが発生することが報告され、膝蓋骨のアライメント不良やトラッキングエラー、滑膜ヒダのインピンジメントが原因として示唆された

1982年〜:関節アライメントが正常でもPFPSが起こりうると報告され、それ以降は過負荷が原因と考えられてきた。過負荷は一度の高負荷や反復性の負荷、関節圧の増加や血流の減少など。

この歴史からすると「確定診断のできる疾患を外した上で、膝周囲の疼痛やスクワットのように膝蓋大腿関節圧が増加する動作によって疼痛が増強する状態」をPFPSと考えてよさそうです。


ただ、近年の資料等でも
「膝蓋骨軟化症・滑膜ヒダ障害・膝蓋骨亜脱臼など膝蓋骨と大腿骨が接している部分の膝関節障害の総称」
「関節軟骨障害(骨軟骨骨折、離断整骨軟骨炎、膝蓋大腿関節症)、膝蓋大腿関節不適合による障害(反復性膝蓋骨脱臼、excessive lateral pressure syndrome:ELPS)、滑膜ヒダ・膝蓋下脂肪体炎」
とするものもあって、以前のようなより広義にPFPSを捉える傾向もあります。

膝前面痛

膝前部痛(AKPS)というPFPSに類似した言葉。これに関しては
「膝蓋腱炎・膝蓋骨不安定症・分裂膝蓋骨など、広く認められている障害を除いた症候群」とするものがあり、脂肪体の腫脹や線維化を指すことが多い。

AKPSとPFPSの変遷を踏まえると、AKPSは狭義のPFPSに近い意味みたいですね。


膝関節疾患のリハビリテーションの科学的基礎 (Sports Physical Therapy Seminar Series)

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膝蓋大腿関節

目次

大腿骨

  • 内側顆約35×15mm・外側顆約40×15mm。形態的には外側顆が大きいが、関節面は内側顆の方が広く長い
  • 両顆間の前方部分は膝蓋骨と関節面を形成し(膝蓋骨溝patellagroove・関節軟骨厚2~3mm)、後方部分は十字靭帯の通路となる顆間窩を形成
  • 内・外側顆は、下方で曲率が大きく、後方で曲率が小さくなっている。膝伸展位で接触面が広くなり安定しやすく、膝屈曲位で自由度が大きい

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膝蓋骨

  • 大腿四頭筋に内包された人体最大の種子骨で、4~5mmの関節軟骨を持つ

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  • 内・外側関節面で形成される角度(膝蓋骨facet angle)は130±10°
  • 外側関節面は大腿骨顆間溝の外側関節面の全体的輪郭と適合し、内側関節面は解剖学変異に富み、Wiberg分類ではⅠ型(24%)・Ⅱ型(57%)・Ⅲ型(19%)の3つに分類

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膝蓋大腿関節

膝関節最大伸展位では膝蓋骨は顆間溝から浮いており、自由に動けます。反対に屈曲位になると初動では内方へ移動しながら大腿骨と接触面を持ち、周囲軟部組織の緊張によって可動性は減少しちゃうんですね。
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屈曲に伴い膝蓋骨の大腿骨に対する接触面は、下方から上方へ移動し90°付近で最も上方に。屈曲115°以降になると接触面は大腿骨の左右に分かれて、顆間深くに入り込みます。
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また、屈曲60~90°付近で膝蓋大腿関節の接触面積・関節圧も最大に!しかも、そのときの膝蓋骨の接触面積は全体の30%しかありません。
だから、ラッキングエラーがある状態・膝優位の姿勢制御で運動を行っていると脱臼や離断性骨軟骨などのリスクを伴ってしまいます

膝蓋骨の運動

前額面→屈曲に伴い外旋(25~130°の間に約6.5°)
冠状面→屈曲に伴い内旋(25~110°の間に約11°)
矢状面→屈曲60°付近で後傾が最大
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制動要素
①静的要素=内・外側膝蓋支帯
膝蓋支帯には横走する膝蓋大腿靭帯・膝蓋脛骨靭帯、その表層に縦走線維があります。
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②動的要素=大腿四頭筋

X線評価

大腿骨滑車の角度、深さ、膝蓋骨facet angle、膝蓋骨の傾斜具合など
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拘縮とは

目次

関節可動域制限とは

【拘縮:可逆的】
「皮膚や骨格筋、腱、靭帯、関節包などの関節周囲軟部組織の器質的変化に由来した関節可動域制限」
※筋収縮由来は含めませんが、関節可動域制限は実際のところ器質的変化と筋収縮(スパズムや痙縮など)の影響を加味して考えていきます

【強直:非可逆的】
「関節構成体自体が原因で生じた関節可動域制限」


拘縮の分類(病変部位)

●皮膚性拘縮
●筋性拘縮
●靭帯性拘縮
●腱性拘縮
●関節性(関節包)拘縮


拘縮の分類(原因)

●結合組織性拘縮
結合組織によって構成される皮膚・皮下組織・筋膜・靭帯・腱・関節包が原因で起こる拘縮
●筋線維性拘縮
筋長短縮や筋原線維の配列乱れなど、筋線維自体の器質的変化

拘縮の病態とメカニズム

責任病巣

ラット動物実験では拘縮の進行は不動開始後1ヶ月で著しいことが分かっています。ではその責任病巣はどこになるのか?
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それは関節によって差はあるものの

- 1ヶ月以内の責任病巣の中心は骨格筋の関与が強い

- 1ヶ月以上では皮膚・骨格筋以外の要素(=関節包)の関与が強い
ということが分ります。

皮膚由来の拘縮

不動後、1週以内に皮下組織内の脂肪組織に萎縮・消失を認め、これを置換するように線維性結合組織が増加していきます

骨格筋の変化由来の拘縮〜筋長(解剖学的)変化〜

不動後1週間で約11%短縮しますが、その後に著明な変化はありません!ですので、拘縮進行に短縮が直接的に影響を与えてるとは考えづらい

骨格筋の変化由来の拘縮〜伸張性(機能的)変化〜

張力は3週目から有意に高値となり、10週目以降はプラトーになります。伸張性の低下は不動期間と相関しているので、拘縮の進行とも関連が強いと言えます。

それでは筋の伸張性の変化をより詳しく調べようとすれば
①筋線維の滑走不全によるもの
②筋膜の変化によるもの
どちらが主たる原因かとなります。

これに関しては筋フィラメント間の滑走についての報告がまだ十分ではなく、現時点では筋性拘縮の病態の主原因は筋膜と結論づけても問題ないようです。

筋膜の変化(コラーゲン含有量の変化)

ラット動物実験では不動1~2週でコラーゲン含有量が増加しています。この病的な量的変化が線維化(伸張性低下)につながるわけですね。
加えて、タイプ1(筋上膜や筋周膜など硬度が要求される組織て含有量が高い)が筋内膜で不動4週まで有意に増加している点は見過ごせない点です。

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筋膜の変化(配列変化)

コラーゲン線維は本来筋線維に対して縦走し、十分な可動性があります。しかし、不動によって横走線維の割合が増加してしまいます。

関節包の変化由来の拘縮

関節包=内層の滑膜+外層の線維膜ですよね。滑膜は伸張性に富み、線維膜は伸張性に乏しいという特徴があります。
ですので、不動に伴い問題となるのは滑膜!
不動に伴うメカニカルストレスの減少によって

  • 隣接する滑膜同士の癒着
  • 関節軟骨と滑膜の癒着

などが起こります

参考文献

関節可動域制限―病態の理解と治療の考え方

関節可動域制限―病態の理解と治療の考え方