3年で駆け上がる新米理学療法士

整形外科中心の急性期総合病院で働いています。一般的な整形外科疾患やスポーツ障害・外傷のリハビリ経験、文献や個人的に勉強したことなどを発信していくブログです。

膝離断性骨軟骨炎

目次

膝OCDの治療方針などはこちら!
therapist-step.hatenablog.com

膝離断性骨軟骨炎(膝OCD)とは

①関節面の軟骨下骨組織の壊死
②次第に関節軟骨を含む骨軟骨片が母床より分離
③最終的に関節内の遊離体へ


人口10万人あたり15~30人程度(0.015~0.03%)と報告され、成長期のスポーツ障害として広く認識されてます。好発年齢は骨端線閉鎖前の10代で、約2:1で男性に多い。成人でも診断されることがありますけど、これは学童期にOCDが無症状のまま経過して骨端線閉鎖後に症状が出現したものと考えられてます。

* 発生時期による分類
・ 骨端線閉鎖前の若年者のOCD(juvenile OCD:JOCD)
・ 骨端線閉鎖後の成人のOCD(adult OCD:AOCD)
* 安定性による分類
・ 安定型
・ 不安定型
JOCDでは安定型病変(ICRS OCDⅠ・Ⅱ)、AOCDでは不安定型病変(ICRS OCDⅢ・Ⅳ)であることが多い。

発生原因

外傷・overuse・局所の血行障害・血行障害に伴う軟骨下骨の壊死・骨化遅延・円板状半月板の関与・遺伝的要因・軟骨代謝異常など。
直接的にはoveruseによる軟骨部の剪断ストレスが派生して、その深部の軟骨下骨が分離して起こると言われています。

簡単に考えれば
①成長期の骨の力学的弱点や筋腱の柔軟性(内的要因)
②スポーツによって膝に加わる負荷(外的要因)

に分けることができると思います

好発部位

大腿骨内側顆部が約85%
外側顆部が約15%
まれに膝蓋大腿関節面にも発生し、膝蓋大腿関節のアライメント異常が指摘されています。

一関節一病巣(単病巣)と両側対称性や多関節に発生する多病巣のものがあります。単病巣例はスポーツや外傷など外因を契機とする例が多く、多病巣例は甲状腺機能低下や成長ホルモン異常など内分泌系異常のものとWilson病など代謝異常の症例に多いようです。


f:id:therapist-step:20180514201932p:plain


また、classicalタイプは顆間部であり、関節面の最荷重部から外れていることから、単純な荷重ストレスによる発生とは考えづらいですね。

国内では外側円板状半月板に合併したものが多く、外側顆部にも比較的多く発生することが知られてます。

  • 成長期サッカー選手の罹患膝は軸足である左膝に多い傾向にあり、大腿骨内顆より外顆に多く発生している(諸岡ら 2011)
  • スポーツ種目別ではサッカーが約半数を占め、大腿骨外顆の発生頻度が高い(吉矢ら 2011)

一方で、大腿骨外顆での発生時の円板状半月板の合併率は33%と低かったことから、内的因子よりも過負荷による外的因子が強いのではと考察しているものもあります。

これに関して、
不良な関節構造による過負荷とOCDは関連し(Grondalen)、依田は3兄弟に発生したOCDにおいて、3兄弟ともにFTAが180°以上であったと報告しています。

症状

臨床所見は非特異的で成長痛として見過ごされることがあります!
運動時・運動後の膝痛や腫脹、大腿四頭筋萎縮。進行すればキャッチング・ロッキングなど。
非特異的症状ですが、Wilson徴候がテストとしては有名どころ(ただ、陽性率は25%と低い)。

画像所見

画像所見では軟骨骨片が不安定であるかどうかを検討することで、今後の治療方針の参考になります。X線像で判明する場合は進行していることが多く、軟骨や軟骨下骨の評価ができるMRIが初期診断および治療方針の決定には有効。

X線:Bruckl分類>
StageⅠ:黎明期 X線画像で異常がない
StageⅡ:透亮期 病巣部の骨吸収により骨透亮像(骨が破壊され吸収された状態)を認める
StageⅢ:分離期 病巣の分節化、周囲の骨硬化像
StageⅣ:遊離期 病巣部が動いている(不安定性が進行)
StageⅤ:遊離体形成期 遊離体が関節内に認められる


MRI:Nelson分類>
Grade0:正常
GradeⅠ:病変部の信号領域の変化のみで、軟骨層は正常
GradeⅡ:病変部軟骨領域の膨化を伴った高信号像がみられる
GradeⅢ:骨軟骨片周囲に関節液の存在が認められる
GradeⅣ:混在または低信号を示す遊離体が関節内に存在する、または病変の中心部に混在または低信号を示す遊離体を示す像がみられる


<関節鏡所見:病期分類として定着しているICRS分類。4段階に分け、治療方針を選択>
ICRS OCD Ⅰ:病巣部は連続し軟化は認めるが、正常関節軟骨に被覆され安定した状態
ICRS OCD Ⅱ:関節軟骨の一部に不連続性を認めるが、プローピングで安定した状態
ICRS OCD Ⅲ:関節軟骨面は不連続で、病巣部は不安定であるが転位していない。
ICRS OCD Ⅳ:骨軟骨片が転位し母床内が欠損しているか、母床内に遊離体が存在する状態

JOCD(ICRS OCDⅠ・Ⅱ)は安定型ですが、病態としては病巣と母床との境界部は分離し、線維性組織と線維性軟骨が充満した偽関節と同様の遷延治癒の状態にあります。病巣全体を覆った関節軟骨が病巣を安定化し、不安定性を隠しているんですね。