3年で駆け上がる新米理学療法士

整形外科中心の急性期総合病院で働いています。一般的な整形外科疾患やスポーツ障害・外傷のリハビリ経験、文献や個人的に勉強したことなどを発信していくブログです。

膝離断性骨軟骨炎の治療方針と競技復帰

目次


膝離断性骨軟骨炎の病態はこちら!
therapist-step.hatenablog.com

治療方針と予後予測

「血流再開、骨新生、骨癒合」という骨折治癒の原則に基づいて計画が立てられます。

<治療方針ポイント>
①骨端線の有無
②病変の不安定性
③部位(荷重面か否か)

JOCDでは保存療法が有効の一方で、早期スポーツ復帰を目指す場合には積極的に手術が行われます。
反対にAOCDでは手術療法が選択されることが多いですが、病変が不安定であれば骨端線閉鎖前でも手術となることが多い。

予後不良因子>
不安定型、単純X線像での骨硬化像、直径2cm以上の病変部、classical site以外の病巣部位など

保存療法と競技復帰

成長期で骨軟骨片が安定していれば、安静によって骨折治癒と同じく骨新生が起こり自然治癒の可能性があります。

10~18ヶ月で治癒率は50%(Cahill 1995)で、一般的に良好な結果。

プロトコルを調べてみましたが、免荷・固定をしたり、日常生活レベルを除いてスポーツ活動のみを禁止したりなど様々なものがありました。
ただ、大きな流れとしては3ヶ月を1つの目安にX線MRIで経過を追い、回復が見られれば徐々に活動を許可しています。

この際に守らなければならないのは、疼痛など症状の有無に関わらず画像所見上の改善が得られない間は運動再開をしないようにすることです。
治癒が遷延していれば更に3ヶ月のスポーツ活動を制限。6ヶ月時点で変化がみられなければ手術療法へ流れが変わります。


治療期間が長期になるために、
①骨軟骨強度を上回る負荷によって膝OCDが発生したこと
②膝への負荷量をコントロールするために活動を制限する必要があること
③安静によって組織修復を図れる可能性があること

このあたりはちゃんと伝えておきましょう!

手術療法と競技復帰

骨穿孔術(鏡視下ドリリング)

病巣の剥離がなく、安定期の症例(ICRS−OCDⅠ・Ⅱ)で適応。
周囲正常組織からの血行や骨髄間葉系細胞の流入を促進することにより、病巣の修復・改善を図る方法。
侵襲が少なく、骨端線閉鎖前なら早期スポーツ復帰のために行われることもあります。

スポーツ復帰はリモデリングが完全終了する4~6ヶ月以降!
具体的にはジョグ開始時期は平均2.1ヶ月(1.5~3ヶ月)・スポーツ復帰は平均4.7ヶ月(2.5~6ヶ月)と報告したものがありますが、衝撃の強いスポーツでは復帰時期をやや遅らせることも必要かも...
疼痛は術後早期から軽快していきますが、保存療法同様に画像所見をもとに慎重にステップを踏んでいきます。

病変部固定術

ICRS-OCDⅡ~Ⅳを中心に剥離期で適応。固定材料は骨釘や金属スクリュー、可溶性ピンなどが使われ、特に骨釘は内固定材料に加えて、骨移植による治癒促進も期待できます。
早期荷重・早期競技復帰は骨軟骨片の再脱落リスクにつながるので、固定強度・癒合能(年齢)・荷重時期など慎重に検討していきましょう。

ジョグ開始時期は3ヶ月・スポーツ復帰は平均6.3ヶ月(5~8ヶ月)と、およそ6ヶ月が1つの目安。

骨軟骨柱移植術

ICRS-OCD Ⅳなど遊離体になった骨軟骨片が損傷部で著しく変形変性している症例で適応。骨軟骨柱の採取は大腿骨非荷重部(主に膝蓋大腿関節)より行われます。
癒合が進む術後12週までは慎重なリハビリが必要ですね。

<メリット>

  • 壊死に陥った軟骨下骨に正常海綿骨を移植することによって、周囲病巣部の血流を改善し、治癒促進が期待できる

<デメリット>

  • 骨軟骨柱の最小径は5mmで、小さな骨軟骨片には不向き
  • 複数個の骨軟骨柱を採取したときには、採取部の症状や膝蓋大腿関節障害性変化が問題となる

ジョグ開始時期やスポーツ復帰時期は固定術に近いようです。