3年で駆け上がる新米理学療法士

整形外科中心の急性期総合病院で働いています。一般的な整形外科疾患やスポーツ障害・外傷のリハビリ経験、文献や個人的に勉強したことなどを発信していくブログです。

前十字靭帯(ACL)損傷

目次

病態とメカニズム

スポーツ活動中の受傷が多く、70~80%はストップ動作やカッティング動作、着地動作など減速性の動作中(非接触型)に発生。アスリートを対象とした調査によると初発発生率は0.0006~0.03%とまれですが、再発(反対側も含む)となると約100倍もの高い数値になってしまいます。
再発の受傷機転も高い割合で非接触型損傷ですので、ACL損傷を起こす人は内的因子を保有している可能性が非常に高いと言えます。
受傷時の膝関節の肢位は内旋か外旋かなど議論があるところですが、ある研究では
着地時のACL損傷は着地後30~40msecまでに急激な外反と脛骨の大腿骨に対する内旋が生じ、その後緩やかに脛骨の外旋が起こるとされ、接地後極めて短時間で損傷している。一般的に主張されているknee-in toe-outの姿勢はACL損傷の結果、生じた姿勢である
としています。

<股関節>
接地から損傷までの間、屈曲・内旋位でほとんど動かない
とする報告があり、着地後に足部・股関節ともに固定された状態であると、人は床反力を下肢全体でうまく吸収できず、過度に膝関節に依存することとなる結果、様々な外傷リスクが増加。
股関節内・外旋の筋力比に不均衡があることも多く、
術後に股関節外旋筋を取り入れた結果、再断裂率(反対側も含む)が有意に低下した
という報告もあります。

<足部>
着地後に内側縦アーチ降下と膝関節外反には有意な正の関係
があり、股関節の内転も大きくなります。

<合併症>
MM・LM損傷が頻発。LMは受傷時肢位から横・水平断裂、MMは縦断裂として認められるケースが多い。ACL損傷によって脛骨は大腿骨に対して前方に偏位し、「膝が外れた感じがするときがある」という訴えのように、前方剪断力の増大によって、前後方向のスタビライザーとして働くMM(特に後角に)負担が加わりやすくなるためです。

オペ後リハビリのリスク管理


1. 再建靭帯の再構築
靭帯と異なった組織であるグラフトは術後に阻血状態となり力学的強度が脆弱に。その後に血管新生を得て靭帯に近い組織となるので、過渡期の無理なROMexはグラフトのゆるみを惹起し、関節の安定性を損なう危険性が潜んでます。

2. 骨孔部の癒合
骨孔部の癒合はBTBで2~3ヶ月、STGで3ヶ月。
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 ①グラフトの生着は骨孔の深層から起こること
 ②屈曲時に関節面でグラフトがより動くこと
 ③半月板損傷も頻発すること

 以上のことから伸展だけではなく、屈曲可動域にも注意を払う必要があるのかな。僕はオペ後4wは120°くらいを目標にしています。

3. 反対側も含む再断裂
再断裂が発生しやすい時期は再建側あるいは対側膝の受傷で異なります。理由としてはグラフトの成熟期が挙げられますが、再建側膝受傷は術後1年、対側膝受傷は受傷後2~3年間で多く発生する傾向。

4. 関節線維症(関節拘縮)
術後1番に獲得しなければならない機能は膝関節の完全伸展(HHD0横指)!制限の残存はパフォーマンス低下、キネマティクスの異常、膝前面痛、筋力改善の妨げとなるためです。
多くの病院では術後伸展制限・荷重制限をかけているところは多いと思いますが、Gold standardでは術後超早期からそれら制限はかけていない。長期的には両者に有意差はなく、短期的には良好な結果を示しており、早期競技復帰を可能にします。


メディカルリハからアスリハへの移行は術後約3ヶ月が目安。なのでメディカルリハ中の最大目標はFull ROM(正座・HHD0横指)・片脚起立30cm獲得だと思います。HHD0は弛緩性があっても4wでは獲得したいところ。
メディカルリハの内容は要求されるレベルがどの程度であっても、スケジュール・内容は基本的に一緒。